2008年8月20日 (水)
ターミナル 40
4階の階段を上り屋上に着くと葛城香織が待っていた。
5月下旬の心地良い昼下がりだった。
直人はてっきり香織に告白されると思っていた。
腰辺りまである黒髪を伸ばした、笑顔の少ない女の子だ。
『実は村上にお願いがあるんだけど・・・』
おいおい来た来た。
『一緒にやってくれない?』
えっ!!昼間っからそんな事を言って…。
『ボーカルやってくれない?』
『はいっ~?!』
『ちょっと事情があって奈津子抜けちゃったんだ、お願い。
帰宅部なんだからいいじゃない』
あの歌い方も顔も可愛かった加藤奈津子が脱退したのか。
歴史が少しずつ変わってきているな。
直人の存在が周りの人間の環境を少しずつ変えているようだ。
香織の訴えかける乙女な視線に全く気づかずに少し考えてOKした。
『サンキュー!!じゃあ明日からヨロシクね』
そう言ってそそくさと階段を下りていってしまった。
その日の放課後、幸恵といつものように下校し、音楽を本格に
やりたくなって軽音楽部に入る事を告げた。
彼女の幸恵には香織に誘われたからとは言えなかった。
『そうなんだ…。でも、私もバイト始める事にしたからいいか。
毎日練習って訳じゃないでしょ』
素直に受け答えする幸恵に対して妙に罪悪感を感じた。
でも、やりたかったのにやらなかったバンドへの期待が少しずつ
直人の心を支配していった。
つづく
2008年8月19日 (火)
ターミナル 39
1年生歓迎会が終わりブレイクしたアイドルみたいに
2週間位、廊下を歩く度に男女問わず声を掛けられた。
良く思っていない輩も当然いた。
ザ・ブラックハーツの奴らだ。
軽音楽部なのに飛び入りの直人達に一泡吹かされたからだった。
すれ違う度にガンを飛ばされるが、内心かかってこいやと思っていた。
前世の直人は大学時代に打ち込んでいた空手があったからだ。
黒帯で2段の腕前で実質36歳を過ぎても20コ下の高校生には
負ける気がしない自信があった。
しかし、直人に対しての奴らの憎しみが先日のライブだけではなかった
事を後日知る事になる。
放課後になり幸恵と下校した。
勝井とのバンド話を毎日のようにして暫く盛り上がっていた。
いつもの公園の木の下でキスをして帰るのが日課になっていた。
それより先は親が居ない時…。そんな日々が続いていたある日、
同じクラスでプリティ・プリティのベースで葛城香織に昼休みに
話があると屋上に呼ばれた。
つづく
2008年8月17日 (日)
2008年8月16日 (土)
2008年8月13日 (水)
2008年8月12日 (火)
ターミナル 38
直人はゆっくりと前奏を弾き始める。
お互い合図を送り、勝井はバソコンを叩き曲に備える。
今まで味わった事のない快感がギターから全身に伝わっていく。
自分の音に鳥肌が立ってきた。
これがステージで味わえる興奮なのだろうか。
そして間奏が終わり直人がギター片手にジャンプを決め歌い始めた。
会場は一気に興奮の坩堝と化した。
多分みんな知らない筈なのに意味もわからね英詞に熱狂し
ステージの前どんどん人が集まっていく。
直人はヘドバンをしながら夢中で演奏した。
記憶はぶっ飛びちゃんと演奏していたのかも解らず
オーディエンスの渦に巻き込まれていった。
2曲目からの曲順は、確か・・・
Deep Purple 『Highway Star』
TM NETWORK 『BEYOND THE TIME』
ラストは、Europe 『The Final Countdown』
気付いた時には打ち込みの音楽は停まっていて、
ギターをギュワーンと歪ませながら
『どうもありがとう』と連呼していた。
結局1年坊達を一番熱狂させたのは、広瀬川NETWORKだった筈だ。
つづく























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